フラッグシップ電気自動車 日産 アリア

日産の電気自動車ラインナップでフラッグシップに位置付けられるモデルがアリアです。リーフに続いてEV専用モデル第2弾として、2021年6月に発売が開始されました。ボディサイズは全長4,595×全幅1,850×全高1,665㎜、ホイールベースが2,775㎜となり、クロスオーバータイプのSUVとして、Dセグメントにカテゴライズされるモデルです。ボディサイズは全長に対してかなりホイールベースが長いのが特徴で、同社のSUVであるエクストレイルより全長は短いにもかかわらず、ホイルーベースは逆にかなり長いというサイズ感です。

4WDモデルは最新の高精度制御の「e-4ORCE」搭載

グレードはバッテリー容量で大きく2タイプに分けられ、66kWhを搭載する「B6」、91kWhの「B9」がラインナップします。これに駆動方式がFWDと4WDのふたつが設定され、4WDモデルは最新の四輪制御技術である「e-4ORCE」が搭載されます。

B6は218ps&300Nmのモーターをフロントに搭載し、B9は同モーターを前後それぞれに搭載しています。各モデルの航続可能距離はB6が470km、B6 e-4ORCEで460km、B9が640km、B9 e-4ORCEは560kmとなります。なおEVの購入補助金は国から85〜92万円、各自治体(東京都の場合は70万円)からの補助金も、さらにエコカー減税にも対応するため、実質は350万円程度〜という価格になります。

タイヤサイズはB9 e-4ORCEのみ20インチとなり、それ以外のモデルは19インチが装着されます。最低地上高は180㎜とシティ派クロスオーバーとしてはクリアランスが確保されており、雪道などでの走破性の高さも伺えます。なお4WDモデルは170㎜となります。

EVでしか実現できない広々した室内空間

室内はEV専用プラットフォームによる圧倒的な広い室内空間に驚かされます。センタートンネルを必要としないEVだけに床面はフラットで前後ともに広々とした足元空間が広がります。もちろん4WDモデルでもプロペラシャフトを必要としない前後モーター式となるためフラット形状は変わらずで、これはアリアの大きな魅力のひとつです。

フロントの開けた足元空間は特に魅力的で、特徴的な組子模様の照明含めて独自の世界観すらあります。しかも15cmの電動スライドが可能なセンターコンソールボックス(世界初)もあり、前に出してアームレストとして使ったり、後ろに下げて前席左右間のウォークスルーすら可能とする広い足元空間を作り出すこともできます。ウッド調パネルにはドライブモードやeペダルの設定といったスイッチが組み込まれています。もちろん置くだけ充電やUSB電源、ドリンクホルダーといった機能も集約されており、高い機能性を備えているのも特徴です。インパネ中央の下部には大型の収納ボックスもあり、これがとても使いやすいのも好印象です。

インパネもウッドパネルが配された上質な仕立ててで、しかもそのパネル内にエアコン操作スイッチを内蔵(必要なときだけ点灯する照明付き)するなど、デザイン性と機能性を両立しているのが非常にうまい仕立てと言えるでしょう。12.3インチのディスプレイがふたつ並んだメーター周りも近年のトレンドに準ずるもので、操作系をタッチ操作でできるディスプレイに内蔵させることでシンプルかつ集中的な使いやすさを備えます。さらに声で操作可能なAmazon Alexaをドライバーインターフェースとして搭載しています。

圧倒的な静かさと滑らかさを備えた走り

走りは一般的なEVよりも静かでなめらかな高級感溢れる仕上がりです。もちろん4WDモデルのほうが極上ですが、FFモデルでもガソリンモデル勢よりも上質なのが特徴として言えます。この上質な走行感覚は輸入車的とも言えるもので、思わず左ウインカーと間違えて操作してしまうほどです。

また、バッテリーを剛性アイテムとしても使うことでボディのしっかり感が非常に高く、エクストレイル対比で”ねじり剛性”75%アップという数値すら実現しています。ただしバッテリーがボディ底辺にあり安定感はあるものの、コーナーではボディ上部が揺れる印象があります。これは乗り心地を重視した足回りのセッティングという言い方もできますが、車体がややふらつくのが気になる部分です。

滑らか路面で静粛性が非常に高いのは魅力ですが、その分やや荒れた路面ではロードノイズが目立つ傾向にあり、心象的にその変化量の多さは気になるところです。これはFWDモデルだとより顕著で、静かさを求める点でもe-4ORCEモデルの魅力が際立ちます。また、加速力でも前後ともに300Nmのモーターを搭載し、さらに緻密な制御で加速性能を併せ持つe-4ORCEが非常に魅力的です。これは雪道といった滑りやすい路面でも高い走破性を実現しており、乗り味や安心感という意味でも4WDモデルを選ぶ価値は十分にあります。欲を言えばやはりバッテリー容量の多いB9のほうが実用性の高さはあると思いますが、こちらは使用用途の距離感や予算との兼ね合いで選ぶといいでしょう。

もちろんアリアはハンズオフを可能とするプロパイロット2.0をオプションで選ぶことができ、さらには前後の遠隔操作が可能なプロパイロット・リモート・パーキングも設定され、運転支援も日産の最新仕様を選択可能なのも大きな魅力と言えます。