新しい価値へ進化した新型クラウン トヨタ クラウン

「いつかはクラウン」というフレーズがあったほど、高級セダンの憧れとして位置付けられた存在がトヨタ・クラウンです。しかし時代は代わりSUVやミニバンが台頭し、オーナーの高齢化もあり、やや古風な存在となったのも事実。これまでも若返りをコンセプトにフルモデルチェンジしてきたクラウンですが、最新世代となる16代目は時代に合わせた変化・進化を見せる意欲作です。

ボディタイプは4バリエーションが用意され、先陣を切ったクラウンクロスオーバー、そこから約1年遅れてSUVタイプのクラウンスポーツ、そして本命とも言えるクラウンセダンが追加されました。そしてワゴンタイプのクラウンエステートも追加予定となっています。

MIRAIより80㎜広い後席足もと空間

クラウンセダンは燃料電池車「MIRAI」と同じ後輪駆動用プラットフォームを採用し、2WDのみで4WDの設定はありません。ボディサイズは全長5,030×全幅1,890×全高1,475㎜、ホイールベースは3,000㎜となり、MIRAIより一回り大きい車格となります。MIRAIよりホイールベースが80㎜延長されたことで前後席間距離は1,000㎜と80㎜伸びており、後席空間の拡大にその恩恵があります。

グレードはシンプルにZのみで、パワートレインは2.5ℓ直4ハイブリッド(HEV)と燃料電池車(FCEV)の2タイプが用意されています。HEVはエンジン185ps/225Nm&モーター180ps/300Nmを発生、FCEVはモーターで182ps/300Nmというスペックです。燃費はWLTCモードでHEVが18.0km/ℓ、FCEVが148km/kg(タンク容量141ℓ=約5.6kg)となっています。車両重量はHEVが2,020kg、FCEVで2,000kgです。装備内容やボディカラーなどは大きな違いはなく、価格はHEVが730万円、FCEVが830万円となりますが、FCEVはクリーンエネルギー自動車導入促進補助金の対象となるため、価格差はかなり縮まります。自治体によっては逆転する可能性すらあります。

先進の運転支援を標準装備

インテリアは正統派FRセダンらしい質感と広さ感があり、落ち着きのある空間に仕上げられています。全ドア&トランクのイージークローザー、前後席のシートヒーター&ベンチレーション、後席のリフレッシュシート(マッサージ機能)、プレミアムナッパ本革シートといった上級装備が標準となっています。さらに運転支援も充実で、最新世代のトヨタセーフティセンスに加え、トヨタチームメイトと呼ばれるアドバンストパーク、アドバンストドライブといった走行支援も両モデルとも搭載されます。また運転支援やバックビューに使われるカメラを使ったドライブレコーダー(前後)、デジタルインナーミラー、ドライバーモニターと装備はいたれり尽せりの内容となっています。

装着されるタイヤはダンロップ・eスポーツMAXXで、これがじつに面白い動きをします。横方向が膨らむようにさせることで快適性に良い影響を与えています。MIRAIがスポーツラグジュアリーとするなら、クラウンFCEVは往年のマジェスタを思わせるような、正統派ラグジュアリーな乗り味に仕立てられています。ハンドリングに関しても上質さが際立っていました。足回りはコンフォートにセットアップされていること、ホイールベースが長いこともあり、ややプルプルとした振動はあります。このあたりも含めて”マジェスタ”を思わせる作りです。

新時代のショーファーカー的な乗り味

2.5ℓハイブリッドモデルはエンジン+モーターそれぞれの出力&トルクがあるため、モーターのみのFCEVより力強い加速が可能です。トランスミッションは電気式無段変速機に4段ATが組み合わせられたマルチステージタイプとなっており、しっかりとした変速感もあり心地よい加速感が得られます。従来の名称で言うのであればクラウンアスリート的な走りが連想されます。また、FCEVモデルとも共通する、欧州車を思わせるどっしり重厚感の走りも持ち合わせています。トータルの仕上がりは良いですが、気になるのはエンジン音でした。トヨタのHEVの課題である唸るようなサウンドは高揚感に欠け、走る楽しさという視点ではその魅力をスポイルしています。滑らかでしっとり上質な乗り味はセダンとしては強い魅力があり、ショーファーカー的な感覚で乗るのであれば非常に高い仕上がりと言えます。要約すると、クラウン”スポーツ”があることで、改めて運動性能を強く求めることはせずセダンの魅力である快適性や高級感を追求したと思える仕上げでした。

そしてFCEVとHEVどちらを選ぶかですが、現状は水素ステーションなどを含めたインフラ事情が整っておらず、マルチに使えることも考えて断然HEVです。水素ステーションが近くにある…といったような限定的な方であればFCEVも先進感がありおすすめですが、やはり現時点で誰にでも勧められるのはHEVとなります。