世界で愛されるライトウェイトスポーツの決定版 ロードスター

人馬一体を追求し”軽量”に注力

マツダ・ロードスターは1989年に登場したユーノス・ロードスターを初代とするオープンスポーツカーです。2015年に発売された4代目、通称「ND」が現行モデルとなります。「ふたり乗り小型オープンスポーツカー累計生産世界一」というギネス世界記録に認定されるなど、日本を代表するオープンスポーツカーとして世界中で愛されるモデルです。今や貴重な存在とも言える、軽量で素直な走りを身上とするライトウェイトスポーツカーとして多くのクルマ好きから支持されています。

ND型では「原点回帰」をテーマに軽量さを求めて開発され、安全要件などで重量増が避けられない時代ながら、ベース仕様となるSグレード(MT)は990㎏を実現。マツダがロードスターの走りとして表現する「人馬一体」を追求したのが特徴です。通常ルーフはソフトトップで軽量、もちろん手動開閉式とシンプルな構造を採用しています。

ボディサイズは全長3,915×全幅1,735㎜×全高1,235㎜とかなりコンパクトで、駆動方式はFRのみとなっています。ソフトトップのカラーはブラックが標準ですが、ブラウンやボルドーといったカラーを採用した特別仕様車も設定されていました。

エンジンは1.5ℓ直4NAが用意され、ミッションは6速MTと6速ATが組み合わされます。海外市場では2ℓエンジンが搭載されていますが、日本の道路事情では1.5ℓで十分という判断があったと言われています。131ps/150Nmとスペックは平凡といった数値ですが、軽量ボディによって必要十分なパワーを発揮します。モアパワーを求める声は確かにありますが、いたずらにハイスペックにせず”使い切る喜び”を表現したモデルと言えます。

重量増なく効果を発揮するKPC

車両制御システムが非常に興味深く、KPC(キネマティックポスチャーコントロール)という機構が2022年の改良モデルから導入しています。これはコーナリング時に後軸内輪側のブレーキを”つまむ”ことで姿勢を安定させるシステムです。実際に走るとその効果はテキメンで、KPCがあることで路面の追従性が上がり、車体が非常に安定します。ヒーブ量と言われる車体の浮き上がりを抑制することができ、旋回時にフラットな安定性を手に入れています。そしてKPCのすごいところは、これまである機構(横滑り防止装置など)を使っているため、重量増なく車両の安定制御を実現しているところです。これはマツダが掲げる”人馬一体”の走りをさらに高めた優れモノと言っていいでしょう。

グレードによって走りの味付け・方向性が異なるのも興味深い部分です。ベースモデルとなるSグレードは軽快でヒラヒラとしたハンドリングを味わえます。具体的にはリアスタビライザーやLSDが省かれるなど軽量さが魅力であるものの、その分”ラフ”なハンドル操作をするとリアがフワフワとした不安定さがあり、これを操る喜びと捉えられるか、で好みが分かれそうな仕上げです。

よりスポーティなRSになるとビルシュタイン製ダンパーや専用レカロシート、強化されたブレーキ、さらにはSにはないリアスタビライザーが装備されるなど、カッチリしたハンドリング性能が表現されています。

上質でグランドツーリング的なRFも用意

また、RF(リトラクタブルファストバック)と呼ばれるハードトップルーフ仕様もラインナップされます。重量増はGTカー的なキャラクターを演出し、ルーフが電動開閉できるなど上級モデル的なポジションになります。このRFは2面性のある走りが特徴的で、ルーフを開けた状態では重心が低くなるようなロードスターらしい軽快なハンドリングを見せ、ルーフを閉じたクーペ時には上質な移動も可能とします。エンジンも2ℓで出力やトルクに余裕があり、高速クルージングにも適した仕様となっています。

特別仕様車として設定された990Sもファンから支持されるモデルです。グレード名のとおり990㎏という1トン切りの重量を実現し、しかもそれがバネ下重量の低減で行われており、ロードスターの持つ軽量&軽快なハンドリングをさらに追求した仕様となっています。エンジンやシャーシは専用にセッティングされ、レイズ製アルミホイールの装備など、まさに特別な1台として人気があります。

ワンメイクレースも開催されており、モータースポーツベース車両として「NR-A」が用意されるのも、マツダがロードスターをピュアスポーツカーとして大切な存在としているのがわかります。ロールバーなどサーキット走行向けアイテムを純正オプションとして設定したり、メーカーがパーティレースを主催しているなど、スポーツカー文化を牽引している存在とも言えます。

またイタリアのメーカー、アバルト&フィアットからロードスターをベースとした兄弟車「124スパイダー」も発売されていました。シャーシや基本インテリアはロードスターと共通ながら、エクステリアは専用のデザインが与えられ、エンジンはフィアット製1.4ℓ直4ターボを搭載していたのが特徴でした。ターボエンジンによる刺激を増した走りで通なファンから注目を集めたモデルでしたが、2020年に生産終了となっています。